3日付け読売夕刊1面、久間防衛相辞任の横にひっそりとOHTの鉄砲事件のことが書いてあった。
OHT株20億損失、弁護士が名義借り取引…暴落後姿消す(読売オンライン)
興味のあったニュースなのでちょっと解説。
今日の記事のまとめ
・OHT株鉄砲事件についての解説
●鉄砲とは
まず用語から。
証券10社“鉄砲被害”…仕手戦で決済せず失踪(IZA)
にわかりやすい説明があったので引用
------------------引用---------------------
鉄砲とは、注文を出して売買を成立させておきながら、
株券や代金を証券会社に払わないという不正な取引のこと。
注文するだけして決済しない行為を、発射したら戻ってこない鉄砲の弾に例えたとされる。
関係者の話を総合すると、いわゆる「仕手筋」(特定の銘柄に大量の資金をつぎ込み、
株価を釣り上げようとする投資家集団)と呼ばれる投資家が、
複数の証券会社で先物取引を利用してOHT株に大量の買いを入れていたが、
ある時点で、決済を行わないまま姿を消したというのだ。
-----------------終わり---------------------
●OHT事件の流れ
5月15日、突如として東証マザーズ上場のオー・エイチ・ティー<6726>(以下OHT)が下げ始め、S安比例配分で引ける。
特に材料はなく、当日は様々な憶測を呼んだが、後日、どうやら鉄砲らしいとの意見が主流になる。
OHT株はその日だけでなく、その後1週間以上連続でS安を続け、売買完全合致で寄ったのは5月24日であった。
24日の終値は20万4000円。急落直前の株価は130万円前後であったから、実に84%の下落である。
そしてさらに数週間後、藍澤証券から顧客の信用取引に関わる損失の肩代わりを行った(もちろん請求する)
とのIRが発表される。その額は10人で約10億円であるという。
このような貸し倒れ引当をする証券会社はタイコム、大和が10億円前後、
その他数社が数千万円とネット証券を中心に10社程度に及んだ。
そして今回、日記の冒頭に乗せた読売の記事の内容は
・OHT株で大損こいた人(複数人)がいる。
・それらの人は六本木ヒルズに事務所を構える弁護士に自分の口座を貸していた。
・そして弁護士は行方不明になっている。
・どうやらその弁護士が鉄砲をぶちかまして逃げたらしい。
というもの。 そしてこの流れと弁護士の記事をから、事件は以下のようなものだったと考えられる。
●OHT鉄砲事件の流れ その2(弁護士の動きを中心に)
①弁護士がOHT株を買う
(カッコ内はポジションの例:弁護士OHT100株)
↓
②弁護士が友人らにOHT株を買う(絶対上がるから!&OHTの経営権を獲得したい)から
口座を作って貸してくれと頼む
↓
③友人の口座を使ってOHT株を買いまくる
(弁護士口座:100株 友人名義口座:100株)
↓
④OHT株価上がる
↓
⑤株価が上がったところで友人と自分の口座のOHT株を売る。
この際、また別の友人の口座から買い注文を出す。(ようはクロス取引だ。)
(弁護士口座:現金x円 友人名義口座:現金x円 別の友人名義口座:OHT200株)
↓
⑥売却して得たお金をもってドロン ←いまここ
(弁護士口座、友人口座:0円 別の友人名義口座:多額の借金)
というものらしい。
一言であらわすと、自分が100円で買ったものを、自分が200円で買う(ただし友人名義で)。ということ。
200円で買った友人の口座は放置して、自分は売却益の100円を持って消えてしまう、という訳だ。
●信用取引を使ってクロス取引
上の流れで注意すべきは⑤。
ここで 別の友人の口座を使っても、お金を出して買うのも自分だから儲けにならないじゃん!
という疑問が出るが、信用取引を使うと解決する。
普通の現物取引だと
友人の口座に1億円を入金しても1億円分しか買い取れない。(OHT株が130万円なら76株だ)
クロス取引をしても弁護士口座で1億円のお金が入って、友人口座で1億円拘束されてる。
これだと利益が生じない。
そこで信用取引の口座を開いていると・・・
友人の口座に1億円入金、この時点で3億円までの取引が出来るようになる。
さらに、この口座でOHT株を買い、そしてその株を証拠金としてさらにOHT株を買い増す方法
(俗に言う信用二階建て)を使うとさらに大きな取引が出来るようになる。(蛇足1)
この二階建てを使うと1億円の証拠金で3億4000万円の取引が可能となる。
(蛇足1:この2階建てを使った場合の計算。やっつけ仕事。
1億円でOHT76株購入→この76株を証拠金に掛目は8割だとすると、2億4000万円分の取引可能に。
2億4000万円分のOHT株購入→OHT株は合計260株。
つまり信用取引を使うと1億円で3億4000万円分の株を買うことができるのだ。)
そしてこの状態でクロス取引をすると
弁護士口座:3億4000万円 友人名義口座:OHT株3億4000万円相当260株(証拠金は1億円)となる。
この状態で弁護士は口座から全額引き出してドロンすると、
差額2億4000万円が利益となる訳だ。
(ちなみに残された友人のOHT株(130万円で購入)が一株20万円で追証強制決済になったとすると、
2億8600万円の損失が確定、証拠金1億円が没収、残りの1億8600万円の借金となります・・・)
実際こんな簡単にお金って手にはいるもんなんだな。
元金も相当かかっただろうけど、20億円以上の利益はでたみたいだ。
結論:口座は絶対に貸しちゃいけない(口座を貸した謝礼は10万円程度だったらしい。)
●残る謎
残る謎は5月15日の急落である。
買い方に使った友人名義の口座から残った市場で売りさばこうとしたのだろうか?
もこちょい上手く売れそうだが・・・
他にもこの弁護士が自ら行った取引なのかそれとも黒幕に利用されただけなのだろうか。
とりあえず早く弁護士の身柄を!!!
参考
証券会社に激震「鉄砲事件」の背景
証券10社“鉄砲被害”…仕手戦で決済せず失踪

↑ OHT株価
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