バブルを知らない世代である僕たちですが、先人たちがいったいどのようにバブルをとらえ、
どのような行動をしたのかを知ろう、という昨年7月の企画の続きであります。
第1回(85年4月~87年5月)
第2回(86年6月~89年12月)
今回は1990年1月~12月までの1年間。
●1990年(海部内閣)
・大テーマ
この年の大きなテーマとなったのは上半期はドイツ統合にむけた準備、
下半期はイラクのクウェート侵攻による中東危機と
一言でいえば
海外情勢に振り回された1年 といえるだろう。
・株価
89年12月末につけた日経平均3万8915円はついに抜くことができず、
この株価は現在でも最高値の記録として残ることになる。
この年の株価の推移は
1,2月 3万数千円での推移(じり下げ)
3月 3万円に急落
4-7月 3万~3万3000円のレンジ
8月 3万円割れでそのまま下げ続ける
10月12日 2万221円 これがこの年の最安値
11,12月は2万2000~2万5000円のレンジ
・ドイツ統合に向けた準備
東西ドイツは89年にベルリンの壁が壊され、この年の10月に正式な統合することになる。
10月までは統合に向けた様々な準備(通貨統合がでかい)があり、それが日本経済に大きな影響を与えていた。
日銀は景気過熱を抑制するために金利を上げるのだが、為替はほとんど動かずむしろ円安に振れるという現象が起こる。
これはドイツ統合による期待でマルクが買われまくっていたためであるらしい。
東ドイツは実際はぼろぼろの状況だったのだが、東側は情報公開をしない体質であるため
過大に評価されていた節がある。東洋経済にも「統合で欧州経済を席巻」といった記事が見られる。
しだいににだんだん情報がわかってきたのだろうか、
10月以降の記事には統合後ドイツの財政などの不安材料を指摘するものが見られるようになる。
・イラク、クウェート侵攻
これにより原油価格が60%上昇。1バレル15ドルから25ドルへ。
8月にイラクが動き出し、湾岸戦争は91年なので90年中の影響はこの程度。
ただし目先が全く見えないため株価の重しとなっていたようだ。
・地価上昇
地価の上昇はいったんの踊り場を経て上昇へ。
農地の税金を上げるなどの対策をするものの効果なし。
この点で重要なことは
報道の 地価上昇で一般人が家を買えない。 だからダメ! という姿勢である。
バブル後に発覚するような土地の含み益で証券や企業の価値が膨れ上がっていることにほとんどの人が気づいていないようだ。
ただ、やはり有識者(どっかの大学の教授の記事を読んだところ)はこの点に気づいており、
ただ単に地価を下げればいいという問題ではないと警鐘を鳴らしていた。
・不動産屋
地価上昇で謳歌してるとおもえば、そうでもない。
ノンバンクの規制から11月、12月に資金繰りに困る不動産屋がでてきて
不動産の新興企業がいくつか倒産している。大型では共和(負債総額1900億円)、有豊化成(同920億円)。
以下は月別にみていくことにする。上でしっかり目に書いたから、もはやおまけ。
1月
89年末に日経平均(当時は日経ダウ)は3万8915円の最高値をつけるが
年が明けてもこれを抜くことができない。
89年12月に日銀が公定歩合を引き上げた影響についての記事が多い。
この12月の引き上げは株式市場にとってはサプライズだったようで、
三重野日銀総裁もインタビューで「(景気過熱)予防的引き上げ」と発言し、同時に予防的な引き上げは100年に一回とも。
(89年に日銀は3回公定歩合を引き上げており、この年も2回引き上げることになる。)
2月
日経平均が2月21日に史上3番目の下げ幅である1161円安を記録。3万3-5千円へ。
今後の予測は景気は悪くならないとの見方が多数。
海部首相のクビがかかった総選挙で自民大勝。海部首相の地位磐石化へ。
3月
日経平均が一時3万円割れ(3月22日)
今後、円安がとまらないと厳しいことになるとアナリストの共通見解(理由を読み忘れた。なぜだろう。)
また、イールドスプレッドの開きから中期的には2万7千円を目指すと見るベアも登場。
実際の90年末の日経平均は2万2~5千円。ベアを上回る安値。
90年3月期の予想増益率ランキング、建設セクター1位にカブトデコム。今からみるとマジでバブル。
なおカブトデコムについての記事はこちら
ドイツ統一選。まだ東ドイツの情報が過大に評価されていたらしく、統合後の強国化に懸念を示す記事も。
実際はぼろぼろの状態で大きく西ドイツの足を引っ張ることになる。
6月になるとちらほらドイツの行方にベア派も登場。
6月
株安(日経は3万円台前半)によって大手銀行の自己資本率が軒並み低下。
93年4月より始まるBIS規制の国際営業基準である8%を割るところも2行でてくる。
3万円台前半で8%を割るということはすさまじい過剰融資競争だったんだな・・・
8月
日経3万円割れ。
イラク、クウェートに侵攻。
10月
ドイツ正式に統合。
また中東情勢から原油が15ドルから21ドルに急騰。
株価は10月1日に2万221円と90年の最安値を記録。
12月
イトマン事件の影響激しく住友銀行揺れる。
株価も2万円台前半と銀行やべー。
まとめはすでに書いたので以下小ネタ。
・ブッチホンの元ネタ
小渕首相の電話攻勢がブッチホンといって流行語大賞をとったが(全然流行してなかったのにとったのもウケる)
これはブッシュ(親父)が盛んに電話を利用して各国首脳と連絡を取っていた「ブッシュホン」をもじったものと発覚。
やっと元ネタがわかってウケたわ。ブッチホン考えた奴、15年前のネタだすなよと突っ込みたい。
・ベアリング界の風雲児
高橋高見がベアリング界の暴れん坊として有名だったが、89年に没した。
その後THKというベンチャーが同じくベアリング界を騒がせる存在となる。
THKの寺町社長の経営の下、安売り戦略で業界の評判はクソ悪く、それでいて新規公開時株価日本一、
社長自らは美人実業家との再婚式(超派手婚)で世間を騒がせ、
会社の金15億円を流用して先物取引、脱税、
上場に際して同業の株買い占め(類似企業の株価を上げて自社の株価を上げようとした?)など
まさにネタに事欠かない存在。
なんだ、昔からこういう社長いたんじゃん。ホリエモン。
以上1990年からお伝えしました。
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